学科内俳優コースの「オーディション」を終え、女子に関しては3つの主要な役で3人を残し、男子については同じく主要な3つの役で6人に残ってもらって、言わば「勝ち抜け」の形で「リハーサル」を行っている。
女子3人には一応それぞれに想定された配役はあるのだが、リハーサルの中では互いに別の役も演じてみる。
さらに子役=「遥」のオーディションにも、「母親」役を演じながら3人が付き合う。
そのことによってより深く立体的にそれぞれの役を感じ考えることができるのではないか、という狙い。
同時に各々の人物設定についての検証を繰り返す。
男子はとにかく入れ代わり立ち代わり組み合わせを替えながら3つの役を演じ、漫才の組み合わせや「ボケ」「ツッコミ」の役割すらも入れ替えながらの「リハーサル」である。
これも、いろんな役=人物設定をシナリオから読み取り自分自身でいかに強固にイメージするかの練習のつもりであり、自分の決まった役だけでなくすべての人物について考えていくこと(それを演技として提示してみること)で「一緒にこの映画を創り上げていく」ということに対する意識をもってもらうため、なのだが…。
しかし男子にとっては逆に、こんなやり方に「オーディション」の続きという感覚が拭えず、役者として「対抗者を蹴落とす」べきなのか或いは次々に代わっていく相手役に対応しながらどこまで自分の役を(自分の考えたように)演じ切ることができるのか…といったようなことに戸惑いと不安と、不満が溜まってくる…。実際にみんな、軸を失って「ブレて」しまう。
どんな状況でも思いっきり演じてみろと思う。
そんな中でいかに柔軟に対応し自分の表現ができるのかを探ってほしい、タフになって欲しい、と思う。
でも、「学生に不安と不満が溜まっている」のなら、「教員」としてはそれを解消せねばならない。
今まで僕はプロの若手俳優を相手に同じようなスタイルで何度かやってきた。
だがいま、彼らはプロではない。
僕もやり方を変えねばならない。
北白川派の「ムツカシイ」ところ。
同時に「面白い」ところ。
こういう状況をうまく生かしながら、彼らの魅力を引き出し、映画の中で輝かせなければいけない。