フィルムの時代(!)には「棒焼きラッシュ」と言う言葉があった。
撮影した翌早朝に現像所にフィルムを送りそのままの状態でポジ・フィルムを焼いてもらって撮影所に送り返してもらい夜に試写室でラッシュを観る。
これが一番早く撮影したフィルムを観ることが出来る方法だった。
とりあえず焼いただけだからNGもそのままの状態で撮影された順番になったまま、色補正もされてなくて、当然音は付いてなくサイレント。
それでも監督以下助監督や記録さん、撮影部、照明部は一刻も早くチェックしたいのだ。特にクランクイン初日分の棒焼きラッシュは試写室に緊張感が漂っていたものだ。
各パート問題がないか。バレものはないか。レンズごみはないか。最悪のケースは再撮もありうる。他にもいろいろな課題が解消されているかをチェックする。他のパートには解らない細々としたことがたくさんあった。例えば記録さんは衣装や小道具のつながりから俳優さんの顔の向き、手の位置などなど。
俳優さんも自分の芝居を試写室の大きなスクリーンで観て悩む。あの芝居で本当によいのか。カメラにはどう言うアングルで写っているのか。表情や相手役との位置関係や細かな仕草、話し方、間、などなど。時に、監督はああ言ったけれど、別の芝居があるのではないか。
と言うような状況が「棒焼きラッシュ」と名付けられた時間だった。