高原校舎に降りしきる雪。
4回生の集大成である卒業制作展も明日で終わりを迎える。
その最終日前夜、高原校舎の観客動員は100人を越えたそうだ。
教授陣のほとんどが北白川派で取られ、相談相手も居ない中、彼ら4回生は最後の意地を見せた。
同時に北白川派福岡組「正しく生きる」も物語の終盤を迎えようとしている。
今日もまた一人東京から来た俳優 宇野祥平さんがアップし、圭役の宮里紀一郎も自分の芝居部分を終えた。
あとは電話の声を残すだけだ。
そんな中、小さな少女が奮闘している。カピバラ人形を連れた紗月ちゃんだ。
カピバラは妹 つむぎちゃんの大切な友達で、そのカピバラはいつもお姉ちゃんの撮影現場のお供に来る。
紗月ちゃんは朝から少し咳き込んでいた。出番の声がかかり、お母さんも僕も「頑張ってね」と送り出すと紗月ちゃんは「うん!」と元気に車から駆け下りていった。
現場は狭くてお母さんも入れない。彼女はたった一人で撮影現場へと向かっていった。
しばらくしてお母さんが、「お茶をたくさん飲んだいたのでトイレを我慢しないように言ってもらえますか」
その言葉には気付かなかったが、本当は熱が出ていたらしかった。
それでも彼女は大人の中で一生懸命戦っていたのだ。
具合が悪いとか熱があるとか誰にも言えず、一人で耐えながら頑張っていたのだ。
頼りのカピバラもお母さんと一緒にカバンの中で心配していたに違いない。
結局、熱がある事に演出部が気付き、今日の予定を1シーン残して終了した。
先程お母さんに電話を入れた際、「まだしんどそうですけど、薬を飲ませて早く寝かせます。すみませんでした」との言葉。こちらが恐縮してしまう。
小さな子供が頑張っている。
大人が頑張れなきゃ、嘘だと思う。後少しだと浮ついてたら天罰でも下りそうだ。
実景を残せばあと三日、ラストカットの「OK!」まで各部一丸となって突き進もう。
改めて今日、映画に挑む姿勢を小さな子供に教えられた。
……雪は今もなお降り続く。
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