ハナミズキ

高原では春の終わりにハナミズキの花が咲く。

写真は僕が見た六度目の賑わいだ。

北白川派映画も僕の着任と期を同じくして第一回目が始まったから、今年で六作品目に突入する。

と同時に四作品目にあたる林海象監督の「弥勒」がいよいよ満を持して公開する。

この五年、映画づくりってホント大変だなと実感させられ、また必死になってひっついてきた学生たちを何人も社会へと送り出した。

毎年必ず咲くハナミズキだが、今年はいつもより早く咲いた……。

 

舟を編む

とても良い映画だった。

僕の事務所の先輩や「正しく生きる」で弁当屋の店主役だった祥平ちゃんも良い役で出演していて嬉しくなった。

祥平ちゃんからは、福岡組の撮影時に「一番良い印刷工たちとのシーンがカットされていてあまり目立たないんです……」と聞いていたが、嘆く必要なんてない。十分に物語の中に生きていた。

そしてクライマックスで辞書が完成し、出版パーティーのシーンで驚いた。

なんと、配給の有吉さん(映画学科非常勤講師/マジックアワー代表)が出てるじゃないか!

映画も良ければ役者じゃない有吉さんの演技も素晴らしく思えてしまった。

いや、有吉さんは本当は役者だったのかもしれない。

とにかく、映画は役者全員の芝居をしっかりと抑え、誰も暴走する者がいない。

ところどころにあるユーモアは石井監督の得意とするところだろうか、その人間くささが功を奏して後半ではふとしたところですっーと涙が頬を伝った。

この週末何を観ようかなと思っている人、邦画だったら「舟を編む」を勧めます。

映画基礎Q

映画基礎Qというのは授業名で、1回生が映画を作ってみるというものだ。本当の科目名は「映画基礎Ⅸ」である。

この授業、ちょっとおもろい。

 

昨年まではGWの時期に1年生全員で京都の山奥、花背山自然の家に合宿して食事を作ったり、バーベキューをしたり、先生方の映画を見てはちょっと講義を聴いたりする授業だったのが、今年からのコース改編により1年生全員参加でまずは映画を作ってみようという授業に変わった。

映画の作り方も脚本の読み方もスケジュールの立て方も機材の扱い方もスタッフィングも演技も何もかも、教える前にやらせて失敗させる、何ともある意味贅沢な授業なのである!

失敗作品や未完成作品を作らせるのに時間と多くの教員が動いているのだ。これ以上贅沢な事は無い。

失敗をハナから予測しながら、その10分程度の脚本はなんと、「あなたへ」(主演:高倉 健)などを手がける青島武先生の最新オリジナルである。(本学客員教授)しかも、青島さんは自分の脚本を勝手に改訂しても良い、好きなように弄って跡形もなくなったって構わないと、そんなことまで言ってるのだ。

ちょっとお前ら1年坊、この映画製作Qがどれだけ凄い授業か有り難みを持った方が良いぞ。

我々にじゃなく、一生に一度あるかないかの自分自身の贅沢にだ。

準備日に遅刻や欠席している場合じゃない。

自分のチャンスは自分で護れ!

死ぬ気でやれ!

 

撮影はこの共通の台本を基本に専任教員である監督たちが四班に分かれて指揮を執る。

指揮と言っても聞かれた事に答えるくらいだ。なんせこっちとら失敗させねばならないんだから。

これが脚本も良い、撮影も演出も良い、なんて事になったらたまったもんじゃない。

さっさと退学してもらうしかなくなるだろう。

 

学生たちは、高橋伴明監督チーム、伊藤監督チーム、山本監督チーム、福岡監督チームに別れてすでに準備に動き出している。

そして僕は、福岡チームの副指導員として失敗させる使命に燃えている。

 

まあ、そんなわけで、今年もGW返上で学生に映画製作に付き合う事になりそうだ。(><)

ブログ再開!

新学期が始まってガイダンスやら授業計画やら忙しさにかまけてブログが止まってしまっていた。

だが、今日から再びブログを再開しようと思う。

まずは映画学科高原校舎での舞台公演に関して紹介しよう。

 

Theater A・studio 舞台公演!

去る4/20(土)&21(日)2回生監督コース尾崎健が中心で旗揚げした舞台公演「Romeo N’ Juliett」が大盛況のうちに幕を閉じた。
戯曲はシェイクスピアの「ロミオ&ジュリエット」から構想を得た尾崎のオリジナル作品。
シェイクスピアは確執のある二つの家柄に生まれた男の女の許されぬ恋を描いたが、尾崎の作品はこれを敷衍させ改訂している。
ジュリエットの恋する相手は当然ロミオという固定概念を逆手に取り、本物のロミオをモンタギュー家から見捨てられたもう一人の主人公として三角関係の中に登場させた。
新たな切り口は観客から支持を得たようだが、僕としては何より監督コースの尾崎がオリジナルに挑み、俳優を評価対象へ導いた事を賞賛したい。
さて、高原では次々と猛者どもが自分たちの爪を研ぎにかかっている。
次回舞台は3回生 衣笠友裕が演出する「遭難、」だ。「正しく生きる」では宮﨑君の子分役で出演していた俳優だ。
稽古中の彼らに会うと、こちらは誰も彼も自身の不出来にはがゆさを隠し切れないでいるようだ。
これは何かが劣っているものでは無いと期待したい。
成長すればするほど定めた到達点は遠のき始め、さらにそれを追えば逃げ水の如く遠ざかる事に各々が気付きだしているとしたら、それだけで期待と安堵は破顔となってこみ上げてくる。
もの作りとはそんなものだ。
衣笠たちが限られた時間のどこで断念して芝居の駒を発表へ進めるのか、彼らの創作者的涵養を決して見逃してはならないと思っている……。