撮影二日目。
初日から三日間は、漫才師に憧れるこの二人が中心になるシーンである。
少年院を脱走した二人が、通りすがりの人を路地裏に拉致して漫才を見せるシーンはまだ先だが、彼らには芝居を越えた最上級の漫才が求められる。
漫才なんて一朝一夕で出来るものじゃない。
彼らはクランクインまでの間,何週間にも渡る稽古をし続けた。
ネタが面白くないと言われ落ち込み,テンションが足りないと突っ込まれ,弾けてないと首を振られ、二人はドツボにはまっていった。
しかしクランクイン前、たまたま彼らの稽古を見に行くと断然に面白くなっていた。
ネタとは笑かす内容の事ではなく、一挙手一投足すべての事だと気付いていた。
テンションとは,ただガムシャラに言葉を張るものではないと判り始めていた。
弾けるとは,自らが楽しんでない限りは生まれないのだと知り始めていた。
彼らの役の設定を踏まえて生み出されるネタは,構築されればされるほど”その内容”より”愚かしい人物像の悲哀”として観る者の心に迫り来る。
監督が求める漫才とはいったい何か……寄席や漫才を観に行く人々も実は何を求めて足を運ぶか、彼らはようやくそこに気付き始めたかもしれない……。
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