いつかと遥

前回アップした小児科医(大森立嗣さん)の元に訪ねて来るいつかと遥。

いつか役の青山理沙も大健闘だが、大人顔負けの集中力を見せる遥(早川紗月ちゃん)には驚かされる。

ちらっと覗いたこのシーンも堂々としたものだ。

 

この日、ラストシーンはズブ濡れで歩道橋に立つシーン。

風邪を引かせてはいけないと帰りに銭湯に寄って温まって帰ってもらう事にしていたが、その銭湯を紗月ちゃんは朝から楽しみにしていたそうだ。

銭湯さえも楽しみにしているとは……汗と埃を洗い流すところとばかり思っていたオッサンには有り難くて涙さえ溢れてきそうだ。

 

さて、明日からさらにいつかも遥も山場へと向かっていく。

一足先にアップした僕らとしては、彼女達の撮影の無事を祈るばかりだ。

山場は険しければ険しいほど、きっと役者を魅力的に見せるだろう。

頑張れ、いつかと遥。

山の頂きには必ず銭湯以上のものがあるはずだから……。

あのカピバラの正体は!

紗月ちゃんが車に忘れていったあのカピバラのちっさい人形、その正体が判った!

あのカピバラ人形は、3歳になる紗月ちゃんの妹 つむぎちゃんの宝ものだった。

お姉ちゃんが出かけると知って「これカバンに入れとくね」といつも連れていかせるらしいのだ。

 

水上「つむぎちゃん、自分の代わりに連れてけってことですかね?」

お母さん「きっとそうだと思います」

水上「今日もいるんですか?」

お母さん「はい、います」

なんか泣かせる話だ。

 

前回預かっていたカピバラ人形は、宿題でお願いしたお絵描きの道具と一緒に送り返していた。

一時は芝居の神様なら、自分の出番が終わるまで預かっていようとも考えたが、さっさと送り返してホント良かった。

もう少しで純粋な子供心を欲の張ったオッサンの手垢で真っ黒にするところだったのだ。

 

今頃はあのカピバラもお母さんや紗月ちゃんとお家に着いて炬燵でのんびりしている頃だろう……。

俳優部、続々オールアップ!そして続く演制会議!

白石役、柄本明さんのアップを皮切りに、続々と俳優部のアップが続き、今日は久保田役、宮崎将さんとその子分役で奮闘していたうちの伊藤、衣笠、岡村、林原、大澤、米川、奥山らもアップした。

役者は自分の出番が終われば後は完成を待つのみだ。今さら手伝う場所もないし、逆に足手まといになってしまう。

なぜなら、演出部や制作部は撮影が終わってから必ず毎日の反省会と次の日の段取りを綿密に打ち合わせているからだ。

誰がどの場所を担当するか、自転車はどこに停めさせろだとか、細部に渡る検証をし尽くしていく。

そして今日の会議もこれから迎える正念場に監督補の浅利さんの檄が飛んだ!

 

実はこの演出制作合同会議が面白い!

浅利監督補、山本プロデューサー、田中制作主任を中心に本日の反省点を挙げさせて、何がいけなかったか、どうすべきだったかを事細かに検証していく。

自分のミスを自己申告できなかった者は逆にミスを指摘されるから失敗を黙っていられる訳が無いし、言われるまで気付かない者は即刻皆の笑い者になってしまう。

こんな実習は何処の大学を探しても有るわけない。

やはりここは現場なのだ。

 

演出、制作は毎日の行動を深く反省し、必ず次ぎに生かしていく。

じゃあ俳優は?

出来上がった作品を観て、自分の芝居に孤独に頭を抱え反省するのだ。

必ずそうなる。

だから若者よ、やるならたくましく自分を育てろ!

勝つ気が無いなら客で観てろ。

現場は常に戦いなのだから……。

出番!

今日は自分の出番だった。

拉致られるヤクザの役だ。

 

クランクインから今まで若手の現場をチラチラ見てきた。もちろん芝居に関しては何も言わない。

ここは現場だからだ。

現場はたった一人であらゆる者と戦う場所だ。

怖じ気づけば監督から根本を改められるし、自ら首をひねればお互いに納得のできないテークが繰り返される。

芝居が良くなきゃカメラマンだってこっちにフォーカスを合せないし、合せろとアピールすれば逆に芝居がボロボロになる。

芝居相手だってそうだ。どう出て来るかわかったもんじゃないし、舞台じゃないから決められた芝居なんてあるわけない。

何が飛び出すかわからないから映画なのだ。

 

現場は常に戦いだ。

気が狂いそうな事に経験値も糞もねえ。

けど一つ言わせてもらうなら、この窒息しそうなまでの緊張感とその恍惚はやっぱり大学の先生だけじゃ味わえねえな…。(~~)

嗤う

撮影二日目。

初日から三日間は、漫才師に憧れるこの二人が中心になるシーンである。

少年院を脱走した二人が、通りすがりの人を路地裏に拉致して漫才を見せるシーンはまだ先だが、彼らには芝居を越えた最上級の漫才が求められる。

 

漫才なんて一朝一夕で出来るものじゃない。

彼らはクランクインまでの間,何週間にも渡る稽古をし続けた。

ネタが面白くないと言われ落ち込み,テンションが足りないと突っ込まれ,弾けてないと首を振られ、二人はドツボにはまっていった。

 

しかしクランクイン前、たまたま彼らの稽古を見に行くと断然に面白くなっていた。

ネタとは笑かす内容の事ではなく、一挙手一投足すべての事だと気付いていた。

テンションとは,ただガムシャラに言葉を張るものではないと判り始めていた。

弾けるとは,自らが楽しんでない限りは生まれないのだと知り始めていた。

彼らの役の設定を踏まえて生み出されるネタは,構築されればされるほど”その内容”より”愚かしい人物像の悲哀”として観る者の心に迫り来る。

 

監督が求める漫才とはいったい何か……寄席や漫才を観に行く人々も実は何を求めて足を運ぶか、彼らはようやくそこに気付き始めたかもしれない……。

 

可愛い忘れ物

昨日、子役のシーンのリハーサルがあり、終わってから子供とお母さんを車で送った。

別れてから、なんか気配を感じて後ろを振り返るとそこには写真のカピバラが座っていた。

すぐにお母さんに電話してどうしましょうかと尋ねると、しばらく預かってもらえませんかとの事。

 

子供がリハーサルに一緒に連れてきたかと思えば妙なネズミの人形もだんだん可愛くなってくる。

もしも彼女の一番の友達なら、今度会うまで大切にしなければならんだろう。

 

 

さて、この映画はまもなくクランクインする。

役者は様々な願掛けをする。カピバラを連れてきたり、酒を絶ったり、メシを断ったり。

全ては不安との戦いのためだ。

 

もちろん不安は役者だけのものじゃない。

監督だってカメラマンだって,録音技師も美術家も,きっと皆怖くてしょうがないはずだ。

だから必死になって今を頑張っているに違いない。

 

あの小さな子の堂々とした芝居がこのカピバラのおかげなら、

僕は自分の出番までこのネズミを返さないでおこうかと迷っている……。(><)

 

凹む

来期シラバスの作成が迫っている。

WEBシラバスなるもので、昨日、諸々の仕事を一日休みにして必死になって取りかかった。

 

伴明監督も歓さんもタイムアップに間にあわず作成中のシラバスが消えたと嘆いていたので。十分注意して作成し始めた。が、後少しのところで消えてしまった……。

あと一歩のところだった。

 

こんな事を書いても学生たちはピンと来ないだろう。

しかし分かる人は,笑っているに違いない。

 

シラバス作成、おそるべし。

 

ゼミ舞台公演

水上ゼミ(ホントはゼミじゃないんだけど)の舞台公演が始まった。

今期はなんと三本の作品を発表した事になる。

一年で三本、と驚くのは、つまり三本やる予算がないからだ。

そりゃ機材や場所はタダでもチラシを印刷したり、小道具や美術の塗料は普通にかかる。

 

だが、今期のチームは三本をやり遂げた。予算の出っ張りは前回お客様から頂いたカンパを足してなんとか綱渡りを成し遂げたのだ。

さて、その作品の出来はいかに? アンケートを見れば良いも悪いもあるようだ。

 

いつもことあるごとに学生に言っているが、僕が師と仰ぎ尊敬している原田芳雄さんは、かつてこんな事を言ったことがある。

「”ものづくり”には、断念がつきまとう」

どういう意味かと言えば、つまり、”ものつくり”は常に時間の制約の中で創られるという事だ。

もっと時間があればもっとデティールを作れるのにとか、もっと稽古を積めば演技もうまくなるだろうに、とか。

しかし時間の制約の中では、理想と現実のギャップがあっても結局断念せざるを得ないということだろう。

ただ、今になれば、この言葉の後にどんな言葉が続くかがもっとも重要だったに違いない。

 

「〜断念がつきまとう。だから……」

だから……なんだろう。

何か言われたような気もするが、何を言われたのか、今となりゃまったく覚えちゃいない。(><)

 

あ、芳雄さんのこんな言葉も思い出した。

「考えすぎる毛虫は 蝶になれない」

意味はまた今度……。

 

旧友からの手紙

俳優仲間の榊英雄 君からMAILが届いた。 四月に京都で映画を撮るのだと言い、協力して欲しいとの事である。

榊 君は北村龍平監督作品にずっと出ていた俳優で、そのバイタリティから自らが映画監督するまでになった男だ。

出演者には旧知の役者さんも名を連ねていて、僕ももちろん参加したい旨を伝えて送った。

さらに、うちには若手がゴロゴロいるからと言うと、是非あてにさせてもらいますと再びの返信も送られてきた。

 

俳優コースの若者達は,めざましい成長を遂げている。

そしてその活躍する場は,既に校舎を離れてプロの現場へと動き出している。

この『正しく生きる』もそうである。

メインキャストはもちろんだが,脇を固める役者がどれほど大切でどれだけ作品の骨となって物語を支えるかを知る筈だ。

そしてその役を勝ち取る厳しさは,東京に出てから砂を齧る様に苦しみながら実感するのだ。

 

だが若者達よ,今のうちに言っておく。

苦しみとか苦労とか,挫折とか焦燥とか,人生を生きて続ける事に比べりゃ屁でもなくなるということを……。

 

ロケハン

男たちは格好の中央分離帯を求め歩き続けた。
そこは決して今まで誰も踏み入れた事のない聖域だ。

 

Uターン禁止の旗の下、「もう後戻りはない」誰かのつぶやく声も聞こえ始めた…。

失敗

携帯でブログを書いていたら、漫才の稽古のコメントが消えてしまった。

京都に帰ったらやり直そう。

ただいま、「カミハテ商店」舞台挨拶のため富山に移動中!

貢ぎ物

本日から大学では専門科目授業が始まった。
僕の担当するゼミ(舞台公演発表)の学生たちも一年の垢を落とし、帰省先から戻ってきた。
中にはこんなお土産を持ってきてくれた者もいる。ワンカップである。

日頃からワンカップの似合う男になりたいと思っていたが、差し出されると照れくさいものだ。

机の上に置いていたらまるで死んだ人にお供え物をしている気になってきた。

 

一刻も早く飲まなくては……。

ブログ始動!

正月はよく酒を飲んだ。
普段めったに飲まない日本酒をぐいぐい飲んだ。
潰れては寝て、起きては飲み、そしてまた眠った。

 

このブログを見た人は、他のスタッフたちがこんなに忙しく動き回っているのに水上はいったいこの福岡組で何をするんだと思っているに違いない。

 

僕は俳優なのだ。

そもそも僕はこの大学で俳優の育成をしている。そしてその中から将来のスターを作るのが役目である。

この作品では出演もさせて頂くが、演技ジム的な俳優のスケジュール管理を中心に動く事になっている。なので今はあまり忙しくないというわけだ。

 

今日からはこのブログが一番の仕事になるかもしれない。

僕がリハーサルで感じた事、若い俳優たちが監督やスタッフに言えないで相談してくる事を、ここで暴露したいと思っている。

あとはその日にあった出来事をちょっとだけつぶやいてみようかなと考えている……。